この冊子には、一九九八年に発足した岡山県発信のスポーツNGO、
「ハート・オブ・ゴールド(HG)」の一〇年間の営みがつまっている。
HGは「スポーツによる社会開発・社会貢献」を謳って、カンボジアを
主要なフィールドにした国際協力事業を進めてきた。その内容は多岐に
わたっており、例えば、スポーツ育成、障害者自立支援、義肢・義足支援、
エイズ孤児救済、里親事業といった活動が紹介されている。
実際、ページをめくって真っ先に感じたことは、「みんな楽しそうだ!」
という印象だった。それは、「義務としての社会貢献」というイメージとも異なっている。
何かを「してあげる」「してもらう」関係ではなく、みんなでともに楽しさを分かちあう光景には、
HGの活動にスポーツの精神が生きていることが感じられる。
HG代表理事の有森裕子さんは、「できる人が、できることを、できる限り」と言う。
「できる限り」というフレーズを、「義務」の意味に取ってしまうと、重い負担のように
感じてしまうかもしれない。しかし、一〇年もの間、息の長い活動と続けてきた有森さんや
HGの方々の姿が伝えているのは、むしろ「できる限り」やることこそ、
ものごとを楽しく喜び多いものにする鍵なのだというメッセージと思われた。